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ものづくり[後編]

(ものづくり[前編]をまだご覧になっていない方は、こちらからご一読していただけます)


杉山製作所さんの魅力、鉄家具の魅力とは...


はじめに、おおまかに木製か金属製か、家具をざっくりですが分けてみます。

その中でも、金属製の家具から「鉄」に焦点を当てて。


岐阜県関市、杉山製作所の鉄家具を作る職人

鉄という素材には特有の強度がありますよね。

粘りとか弾性とか、場合によっては剛性とか。

自身の木工の経験から考察すると、木材とは大きく違う利点がここにあります。

細かい話をすると木のほうが引張りとか圧縮に対する強度は高いのでしょうが…。


では、家具を作るうえで必要なのはどこの強度か。

それは接合部の強度です。

木材と木材を接合する場合、ある程度の断面積が必要です。

ほぞ組や接着剤を使うため接着面が広いほうがより強度があがるのはなんとなく伝わるかなと思います。


それを鉄と鉄を接合する場合、多くは溶接という技術を用います。

金属と金属を溶かして接合(融接)する、なんとなくこちらのほうが強そうですよね。

もちろん、そこには精度の高い技術も要求されるかと思います。


結果として接合部が小面積にできる→部材を細く作れるにつながると思っています。

そして研磨作業により継ぎ目がほとんどわからないほどに接合部は目立たなくなります。

これは木工の良さとはやはり違うところでしょう。



それがどのような魅力へつながるのか。

例えば同じようなフレームで組まれた椅子の場合、先にお伝えしたように木と鉄では使用する素材の断面積、つまり脚で言うと「細さ」に大きな違いが生まれます。

はっきり言いますが木製の脚の細い椅子、なんだか不安です…。

そういう椅子、あるんですけどね。


しかし、鉄はそんなこと関係ないほど細くても相対的に見て強度が安定します。

これは素材そのものの粘りなど強さだけではなく接合部にも関係していると思います。

鉄家具ならではの表現と言えばいいのでしょうか。


岐阜県関市の杉山製作所の工場に並ぶ鉄でできた椅子完成前

それでは、杉山製作所さんでの工場見学を終えて、個人の見解ではありますが感想です。


しかし、どんなに細くしても鉄は重い…

それを杉山製作所さんの家具は重く感じさせない。

それも溶接の技術や治具の精巧さにあるのかなと感じました。

もちろん鉄ならではの重厚感はありますが線の細さと構造で上手に解消しています。

これも個人的な見解ですが、海外の金属で作られた椅子は、面での構成や部材そのものの断面が大きいという印象です。

これはこれで非常に美しいものがたくさんあります…。

なんでしょうか、日本特有のわびさびみたいな関係しているといいのですが

おそらく設計の方々が軽やかさを重視していることと、要素として日本らしさをどこかで取り入れているのでは?と感じます。


最後にひとつ、家具を作るうえでは「治具」という存在が欠かせません。

木工でも治具は作ります。でも、ちょっと違いました。

杉山製作所さんの治具、非常に美しいです。これも鉄家具みたいでした。

フレームを作る時の溶接を安定させるための道具?こんな表現であっていますか?

見せてもらったけど、これって企業秘密だよな?なんて思ったり、

実際には再現できないだろうから自分が見たところで…ではあるんですけど。


自身も経験を含め少なからず「ものづくり」については思うことがあります。

杉山製作所さんのやはり鉄家具でなければ表現できない線の美しさがあると思いました。

杉山製作所、村上様、佐野様、当日は楽しいお話ありがとうございました。


ところで、このブログの掲載時には弊社に杉山製作所さんの家具が納品されています。

お近くの方はぜひ見にお越しください。

よろしくお願いいたします。


今後もこんな「偏愛」的な偏った文章でお送りすると思います。

日々考えたことを自分の主観で発信できればと考えております。


ご閲覧いただきありがとうございました。


設計室 N


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